【ネタバレするほどでもないけど】グレース・オブ・ゴッド 告発の時は人物描写が非常に丁寧だったよ~
どうも、しがないサラリーマンのよしくんです。
今回は、グレース・オブ・ゴッド 告発の時です。
ん?
何その映画?
って思う方も多いと思います。
かく言う僕も観に行く直前までこんな映画があるということを知りませんでした。
コロナの影響で話題作の公開が延期になり、なんか面白い映画ないかなあと探していたら見つけたのが今作です。
インディペンデント系の映画はあまり見る機会がなかったのですが、今作は当たりでした。
ということで早速書いていこうと思います。
グレース・オブ・ゴッド 告発の時ってどんな映画?
今作のあらすじは下記になります。
妻子と共に、平穏な日々を送っていたアレクサンドル。しかし、彼は決して消えない傷を抱え続けていた。実は、彼は幼少の頃、プレナという神父から性的虐待を受けていたのだ。そして、ある時、未だにプレナが子供達に聖書を教えていることをアレクサンドルは知る。自分と同じような被害者を出さないためにも、彼は自らのトラウマと向き合い、プレナ神父を告発する決意を固める。活動を続けていく中で、アレクサンドルは自分と同じような経験をしてきた人間が多くいることを知る。そして、とうとう教会側はプレナの悪事を認めた。しかし、なんと、教会はそのことをスルーしようとしたのだ。さらには、事実を知った現家族とも少しずつ溝ができていき…?
引用
このグレース・オブ・ゴッドという映画の製作はフランスになります。
えっ?
フランス?
やべえ、知っている俳優いないかも。
と思って調べたら全く知っている俳優がいない(汗)。
まあとりあえず主人公を演じている俳優メルビル・プポーを紹介。
フランス生まれの結構ベテランの俳優です。
彼が幼少期に神父から受けた性的虐待を告発することから物語は始まります。
そして、アレクサンドルの告発に感化されて被害者の会を設立する
フランソワ役にドゥニ・メノーシェ。
クエンティン・タランティーノ監督のイングロリアス・バスターズに出演しています。
このフランソワの人物像に関してもかなり深堀されて描かれています。
そしてもう一人の映画のメインとして描かれる被害者エマニュエル役にスワン・アルローが演じています。
この俳優もこの映画で初めて知りました。
彼もなかなかいい演技を見せてくれます。
う~ん、
出演者の紹介はこれが限界!!
まあ、全然知らない俳優さんたちばかりが出ているのでもう本編の感想にいっちゃいます。(たいして知らなくて申し訳ない汗)
この映画をおすすめ出来る人は?
この映画をおすすめ出来る人は下記になります。
・丁寧に人間の心情を描いた映画を観て心を揺さぶられたい人
・静かな映画を見たい人
フランス映画って静かで退屈な映画が多いというイメージがあるんですが、この映画なら普通に人に勧められます。
えっ?フランス映画でもこんなに面白いの?
そうなんです。
これまで僕の中でのフランス映画は全く面白くないんでしょってイメージでした。
なんか物静かですぐに眠くなるんかなあと思っていたんですよ。
ところがどっこい。
今作に関していうと全くその印象は当てはまりませんでした。
まずこの映画は神父が子供たちを性的に虐待をしていたというなかなかショッキングな題材を扱っています。
そして、そのショッキングな出来事を通して各登場人物の心の機微を非常の丁寧に描かれています。
主人公のアレクサンドルはエリートサラリーマンで、妻子にも恵まれて幸せな家庭を築いています。
そんな彼は信心深いクリスチャンで幼少期から教会に通っていたりボーイスカウト活動に勤しんでいました。
しかし、その活動の中でみんなから信頼の厚いプレナという神父から性的虐待を受けていたという説明があります。
正直そこら辺はめちゃくちゃ眠い(笑)。
超単調な状況説明とフランス語の心地よさが僕を眠りの世界へといざなってくれます。
しかしそんな眠いテンションもアレクサンドルが、自分に性的虐待を行ったブレナ牧師と大人になってから再び対峙するところから物語のスピードが急激に上がります。
自分の非を認める神父。
しかしそこに謝罪はなく、自分も特殊な性癖を持ち欲望を抑えられない被害者であるというよく映画で出てくるクソ野郎的な発言をします。
そして彼は現在でも教会で子供たちに接している。
これに関して頭にきたアレクサンドルがブレナ牧師を告発する決意を固めます。
もちろん告発をすると決めるまでにはいろいろな葛藤も丁寧に描かれています。
告発をすれば当時の嫌な思い出をすべて思い出さなければなりませんし、今は守るべき家族もいます。
そんな中でアレクサンドルは自分が告発すべきか悩みます。
この映画のいいところは話を進めるにあたって勢いはあるのですが、決して勢い任せにせず登場人物の心情を丁寧に描いているところです。
実際に虐待を受けたのは20年以上も前のことでなぜ今ごろそんな話題を蒸し返すのか、過去を忘れて家族と幸せに暮らしたらいいのではアレクサンドルは自問自答します。
その過程をちゃんと描いているのがよかったです。
最終的には家族の応援、そして新たにブレナの被害者を出さないためにも告発を決意します。
このように人物の心情の変化とその過程をしっかり描き、物語を進めているところに非常に好感を持ちました。
声を上げる愉快な仲間たちと活動がどんどん大きくなっていく様は観ていて気持ちがいい
告発を決めたアレクサンドルは、ほかにも被害を受けていた人がいることを知ります。
そして警察を通じて彼らにも聞き取り調査が始まります。
そんな被害者に一人にフランソワがいます。
このフランソワが動き始めたらどんどん物語が進む、進む(笑)。
彼も過去に性的な虐待をブレナから受けており、警察から被害者の一人が告発をしたことを聞きます。
そして自分も告発することを決意し、そして被害者の会を設立した後に記者会見まで開いてしまいます(笑)。
何て行動力!!
しかしこのフランソワも家族との確執や他の被害者との考え方の違いでいろいろ衝突したりします。
特に家族との確執が丁寧に描かれているのがすごく映画に感情移入しやすくしてくれます。
フランソワには兄さんがいるのですがフランソワは兄が被害者の会の活動に非協力的なことをクリスマスの家族とのディナーの席で咎めます。
被害者の会の支援金として10ユーロを看破してくださいというのをSNSに投稿した際に兄さんからだけ応答がなかったためです。
しかしそこでお兄さんが今まで溜まっていた鬱憤が爆発します。
お前が性虐待にあったせいで父親も母親も話題の中心はいつもフランソワで自分はいつもないがしろだ、という嫉妬や不満を持っていたんですね、
その不満や苛立ちがクリスマスディナーの時に噴出してしまうんですね。
何回もいいますがここら辺の確執の描き方が非常に丁寧で登場人物の感情を僕たち観る側もトレースしやすいんですよね。
それがこの映画の一番いいところだと思います。
その後、この兄弟は和解します。
というのもこの兄弟の父親が数日たって兄さんから預かってきた10ユーロを渡す場面が描かれるからです。
こういう、喧嘩した二人が照れ臭いからか面と向かって仲直りしないけど和解したんだなってわからせてくれる表現が僕は好きでした。
そしてそんなこんなで被害者の会はどんどん人数が多くなり記者会見とかも開いてどんどん大きくなっていきます。
そこら辺のスピード感や教会側のひどい対応を見せられるので応援したくなってくるし、悪を倒すというカタルシスも得ることが出来る作風になっています。
エマニュエルが一番味が出ててよかった
一番プレナの被害者の中で味が出ていたのがエマニュエルです。
エマニュエルは前に紹介したアレクサンドルやフランソワと違い、経済的に貧しい環境で生活しています。
しかも、なぜか癲癇持ちという癖のある役どころで一番僕は好きでした。
しかも普通にバイクに乗っているのでいつか事故るのではないかとひやひやしながら観ていました(まあ結局事故らなかったんですが)。
そんな彼もプレナに虐待を受けてそれに苦しんでおりそれがいびつな性格につながっています。
プレナのせいで自分の性器が変形してしまったといって弁護士に画像を見せるくらいですからね。
とはいっても彼は誰かを傷つけたりはせずに他の人の傷をいやしたりもでき多様な顔を見せてくれます。
映画の終盤らへんで、アレクサンドル夫妻とフランソワ夫妻とエマニュエルがホームパーティをしていた時にたまたまアレクサンドルの妻とエマニュエルが二人きりになるシーンがあります。
そこでアレクサンドルの妻は、自分も小さい時に近所の信頼していたお兄さんから性的虐待を受けていたことをエマニュエルに告白し夫の辛さが分かるから応援していると告げます。
それをだまって受けれるエマニュエルの人間としてのやさしさとアレクサンドルの妻の辛い過去を聞いておっさんである私は、思わず泣いてしまいました。
このシーンが私の中では本作で一番良かったです。
そして最終的にはプレナと教会側でプレナの行為を知っていながら隠蔽していた関係者が実刑判決を受けたというテロップが出て作品は終わりましたが被害者の心の傷はまだ一生癒えないということを印象付けられるラストでした。
ということでいろいろ書いてきましたが、今作は僕のフランス映画の印象とは全く異なる作品でした。
フランス映画でも寝ない作品がありました(笑)。
ということで今回はここまで!!
ではでは!!